おすすめ!『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

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おもしろくて一気に読んでしまった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。
Yahoo!ニュース本屋大賞のノンフィクション大賞を受賞したということで日本では話題だったみたいですね。
大いに話題になってくれ!これはたくさんの人が読むべき本!!

あらすじと試し読みはこちらから。(試し読みどころか1章まるまる読める)

めちゃくちゃおもしろかったので、ちょっと友達に話すみたいな気分で感想をつらつら書いていきたいと思います。

この本はざっくり言えば作者・ブレイディみかこさん(日本人)と旦那さん(アイルランド人)の間に生まれた息子さんが、英国の「元底辺中学校」に通う日々を記したエッセイ。
息子の日々を綴ったエッセイと聞くとなんだかほのぼのとした響きだけれど、私は読んでる間に何度も帯の「ノンフィクション」本大賞受賞の文字を確認した。そのくらい色んなことが次から次へと巻き起こります。
登場人物は全員「近所の人」なのになんか皆キャラの濃いし(彼らの背景もしっかりと描かれている)そこで起こる問題に対する息子と母ちゃんの考えや行動力には本当に感服してしまうし、しかもこの息子さんがまた賢くていい子なんだ!こんなこが本当に存在するなんて!
でもね、こんなん本当に中学生の日常で起こってるの?と思いながら最後まで読み終わったとき、これは間違いなくノンフィクションだ、私が『中学生の日常』と高をくくってた世界はそのまま私たちが日々直面している世界の縮図だったんだ、という衝撃に思わず表紙のかわいい絵を凝視してしまった。

この本では人種だけでなく地域や貧富やらの格差や差別や政治の話やとにかくいろんな軸の話題が出てきます。
その中でもやっぱり私は差別や偏見の問題についてが特に興味深いかなぁ 。 海外で暮らし始めて改めてちゃんと偏見について考えなくてはという機会が増えたし。まぁそれ以前に差別や偏見はダメってそれはもう常識以前の問題だと思うけど、 日本にいて日本人や日本のニュースに囲まれていると中々実感を伴って考えたり行動する機会が少ないからね。決してゼロではないけど。
でも今の生活だとアメリカでアジア人として暮らすからには自分の身は自分で守るため、自分とは違う背景を持つ人たちを傷つけないために絶対不可欠だしいっそう意識しないといけないと身に染みる。
自分なりに本を読んだり海外経験が長い諸先輩方の記事を読んだり色んなメディアやニュースで見聞きしたり自分なりにインプットはしている。が、そんな独学の毎日で常々思うのは

できれば正しい知識と考え方の基本をちゃんとどこかで勉強しておきたかった!

ということ。いや「学校で習ってないから知りません~」っていう気は無いですよ。(もしかしたら今は日本でもちゃんとカリキュラムに入ってるのかな。時代の問題なのかな)今からでも遅くないし常に最新情報にしておかないといけないものだから、ちゃんと勉強したかったな~じゃなくて全員日々学ばないといけないんだけどね。わかってる。わかってるよ、うん。でもね、やっぱり信用に足るソースや確かな知識と方向性、背景とか先生による指導を体系的に基礎を学校で習っていたら、その後勉強するにしてもこんなに「これは差別、それは偏見」ってワードに振り回されることはないんじゃないかなぁと思うわけですよ。
もっと言えば最新情報をちゃんと勉強したいし、いま学校で勉強している子たちがうらやましい。。。

差別はダメです。それはわかるけど、じゃあ差別ってどんな行動が差別に当たるの?気づかないうちに差別してしまうのを避けるためには何を心がければいいの?相手に差別されたと思った時の対処法は?逆に気が付かないうちに差別をしてしまっていた時はどうすればいいの?差別ってどこからきてどこへいくの?????

もーーー挙げるときりがない疑問がたくさん。これを片っ端から調べて嘘か本当か分からないソースつかまされて公平性を調べて、ってやらないといけないのか。あと基本的に目に入りやすいのはネットニュースやSNSの個人のつぶやきだから、公平性と信憑性に欠くのは否めない。

そんな悩みに悶々としてた私にとってこの本がありがたいのは、問題の背景や要因・暗黙の了解や常識、教育の場ではどういう指導がされていて子供たちはどんな反応なのかが丁寧に描かれていること。イギリスが舞台なのでイギリスの学校システムはもちろん、私たちがニュースで見たような出来事(EU離脱やグレタさんのスクール・ストライキ)に対する学校や子供たちの反応、ある特定の偏見はどうして起るのかその文化的背景や構造、その発言の何が偏見や差別に当たるのか、これって実際にその影響が現れる場に居合わせないとなかなか知る機会がないって事が多いんじゃないだろうか。

出来ればこれは私の感想や所感を読んでもらうより同じくこの本を読んだ人と語り合いたいので、深い内容については避けてくどくどと語ってしまったけど、ちょっと一つだけ目から鱗だったものをメモしておきたい。

「シティズンシップ・エデュケーション」という科目の話。(詳しくは読んでね)日本では公民とかに当たる科目だそうですが、テストに出た問題は「エンパシー(共感)とはなにか」これって公民とか政治の授業で出る問題か?と思ったら、先生が言うには

「EU離脱やテロリズムの問題や世界中で起きている色んな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分とは違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事、これからはエンパシーの時代」

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』本文

そういわれると確かにものすごく政治や社会構造に関わる問題じゃん!!すべての根幹!この授業私も受けたーい!!
小さい頃によく「他人の気持ちが分かる人になろうね」とか言われるあれって何か個人の努力によるみたいな扱いだったけど、いやもうがっつり全員必須能力ですやん。

ちなみに混合しがちだけどシンパシーは『誰かをかわいそうだと思う感情、気にしていると示す行動』なのに対してエンパシーは『他人の感情や経験などを理解する能力』だそうで、つまりエンパシーは学んで身に着けられるもの。知的作業であればちゃんと学べばいつかは識字や計算のように誰もが一定水準を身に着けることができるはず。たぶん。実際は難しいけどね。

あれは偏見、これは差別ってひとつひとつ潰していくのも大事だけど、そもそもの問題の根幹って 『他人の感情や経験などを理解することができるか』って事ですよなぁ。 こうやってまずは言語化して考えていく作業をやってきた記憶があまりないけれど、この本で考えるきっかけを頂戴した幸運を生かしたいと思う今日この頃です。

私は冒頭で 「私は読んでる間に何度も帯の『ノンフィクション』本大賞受賞の文字を確認した。そのくらい色んなことが次から次へと巻き起こり考えさせられたから。」っていったけど、 確かに私たちの周りは問題だらけだったわ。
書評で三浦しおんさんが「これは『異国に暮らすひとたちの話』ではなく、『私たち一人一人の話』だ。」って書いてらっしゃる通り。

多様性の世界で迷える子羊たちに、ほんとおすすめです。

コメント

  1. […] 前にご紹介した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でもこの話があったな。アフリカ人女性に休暇はどうするんですか?と聞いたらある勘違いをされて地雷を踏んで怒ら […]

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